ラグビーセミナーコラム11 ラグビー界におけるニュージーランド代表というのは、いわば「神様」です

この投稿は、2019年10月20日に和佐木坂サロン内で公開された木坂さんの投稿です。

こんばんは、木坂です。


日本代表について書こうと思っていたのですが、今日のオールブラックス対アイルランド代表の試合のインパクトがありすぎて、ちょっと困っています。


以前の投稿に和佐君がコメントで「ニュージーランドの強さが異次元だった」ということを書いていますが、ラグビー界におけるニュージーランド代表というのは、文字通り異次元で、いわば「神様」のような存在です。

世界ランキングで言えば、ニュージーランドが一位だったり、アイルランドが一位だったり、ウェールズが一位だったりするわけですが、しかし「真の横綱」は今も昔もニュージーランドだけです。

RPGで言うと、ニュージーランドは全てのパラメーターがほとんどマックスになっていて、全員のレベルが96くらいのイメージでしょうか。「何かが得意」とか「強みはこれです」みたいなものがない。全てが得意で、全てが強いチームなのです。

なんとなく、あまりラグビーを知らない人であっても、ニュージーランドが一番強いんでしょ?くらいの印象は持っていたりしますが、実際にはその37倍くらい強いです。ラグビーをやっている人であれば、ニュージーランド代表の試合を観ると、山王のビデオを見た湘北のような気持ちになるものです。

「どーすんの、こんなの・・・」って。

例えば、



このナミビア対ニュージーランドの試合。3分くらいからのナミビアのアタックを見てみてください。

約1分弱、ナミビアのアタックの時間がありますね。セミナーで解説した「ゲインラインの攻防」に注目してください。どうですか、攻め続けたナミビアは50秒でどのくらい前進しましたか。

約、マイナス15メートルです。

50秒攻め続けた結果、後ろに15メートル、押し下げられたのです。

なぜ、そんなことが起こるのか、ということですが、これもセミナーで解説した「人数を余らせる」という話を思い出してください

ニュージーランドの選手がタックルし、ナミビアの選手が仲間を助けに来ますね。そしてボールが出る瞬間、双方何人が寝ていますか。

大体の場合、ナミビアは3~4人、寝ています。

対してニュージーランドは、衝撃の0人です。多くても1人。これは、ナミビアが一回アタックすると、恐ろしいことに15対11というとんでもなく不利な戦況になってしまう、ということを意味しています。

このブレイクダウンの戦い方は、まさに横綱相撲で、現地観戦していた僕は寒気がしたほど、圧倒的でした。

対戦相手というよりも、もう先生のようですらあった。「ラグビーとは、こうやってやるスポーツなんだ」と丁寧に教えてくれる先生。

「ブレイクダウンの攻防」の話もセミナーでしましたが、ブレイクダウンの戦い方は大きく言って2通りあります。

ひとつは、ゴリゴリにファイトすること。日本で言えば姫野君、その他の選手で言えばスコットランドのジェイミーリッチー、オーストラリアのポーコックなどがそのタイプです。

ちなみに南アは全員そのタイプです。9月頭の日本代表対南ア戦、南アは実に11回も、ブレイクダウンでボールを奪っています。対して日本は3つだけ。南アとはそういうチームなのです。


もうひとつの戦い方は、最初だけ思いっきりファイトして、相手が2、3人入ってきたところでスッと離脱し、次のディフェンスに備えるスタイルです。それが、この試合でオールブラックスが徹底していること。


ゴリゴリスタイルは、もちろんボールを奪うことを目的としています。

では、スッと離脱スタイルは何を目的としているのでしょうか?

それは

「相手を攻め疲れさせ、絶対に破れない壁を認識させ、絶望の淵に叩き落すこと」

です。

まさにこの50秒間、ナミビアの選手の目の前には決して破ることができないように思われる「黒い壁」がそびえ立っていたことでしょう。

攻めても攻めても跳ね返され、押し戻され、必死にファイトして顔を上げればもうそこには、あるはずのない漆黒の壁がある。


オールブラックスは、これを80分続けられるチームなのです。


ナミビアがはるかに格下の相手だったから?違います。今日のアイルランド戦も、それを淡々と続けました。そう、ナミビア戦と同じように。結果、スコア以上の圧勝になった。


オールブラックスの試合は、よく「手品のようだ」と言われます。圧倒的にクリエイティブで、圧倒的に曲芸のようで、圧倒的に強い。しかし実際にそういう「飛び道具」で強いチームなど、この世にないのです。キャプテン自身が言うように、オールブラックスの強さは


「当たり前のことを当たり前にやり切ること」

からやってきています。

アイルランドは、とてもよく鍛えられているチームですが、98%くらいしか、当たり前のことをやり切れなかったのです。その2%が、絶望的な差を生んでしまう。


こういう試合を観ると、本当に人生と同じだなと思います。いろいろ頑張っているのに思うような結果が出ない人は、当たり前を当たり前にやっていないだけなのです。

結果を出す人だけが知っている何かがあるに違いない、と白馬に乗った王子様を待っている。もうそのメンタリティが、負け組のそれとも気付かずに。

僕はセミナーで

「ウルトラCを求めるな、当たり前の水準を上げろ」

という話を何度もしています。

それこそが人生のクオリティを上げる最短経路だと思うからです。オールブラックスの試合は、極めて高い水準の“当たり前”で埋め尽くされています。それこそ鳥肌が立つくらいの水準ではありますが、それが、絶対王者たるゆえんなのです。


最後になりますが、日本が明日、というかもう今日か、対戦する南アフリカは、約一か月前、このオールブラックスと接戦を演じたチームです。

日本が勝つためにやらなければならないことは、オールブラックスがナミビア相手にやった、そしてアイルランド相手にやったことと同じです。

南アフリカの選手を「ついつい個の力に頼ってしまう」状況に追い込むディフェンスができるかどうか、まずはそれに注目しましょう。

どんな天才も、有機的に結びついた凡人に勝つことはできない。

そういう試合を日本代表が見せてくれることを、個人的には期待しています。

木坂

追伸:いいチームには、いいコミュニティには、必ずいいリーダーがいます。

ニュージーランドのキアラン・リード、日本代表のリーチ・マイケル。そしてアイルランドには、ローリー・ベストがいました。

皆、チームがキツイときに一番働き、ピンチの時にいてほしいところにいるキャプテンです。


彼はこの試合で、現役を引退します。37歳、ワールドカップは実に4回目です。

チームとしても、彼に、一輪でもいいから、花を持たせたかったことでしょう。

どのような気持ちでこの試合を引っ張ったのか。そしてどのような気持ちで引退していくのか。おそらくもう勝つ可能性がほとんどゼロになった後半、交代していく彼の顔はとても言葉では言い表せないものでした。

僕は彼とは一滴も面識はありませんが、なんだか、15年間お疲れさまでしたと言いたくなる、そんな瞬間でした。